社会現象を巻き起こしている人気漫画『鬼滅の刃』の劇場版最新作、『鬼滅の刃 無限城編』が先週末に米国で公開され、アニメファンの熱狂的な支持を集め、記録的な興行収入を達成しました。
米国でアニメ映画史上最高のオープニング興収
ソニーが発表したプレスリリースによると、『無限城編』の米国とカナダにおける公開週末の興行収入は7000万ドル(約102億円)を突破しました。これは、1999年に公開された『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』が保持していた3100万ドルの記録を大きく塗り替えるもので、米国で公開された日本のアニメ映画として史上最高のオープニング成績となります。
この成功は、配給を手がけるクランチロール(ソニーが2021年に買収)にとっても、またソニー・ピクチャーズにとっても過去2年間で最高の出足となりました。事前の興行予測では、Box Office Proが6000万ドルから7500万ドルと予想しており、今回の結果はその予測範囲の上限に近い、驚異的な数字と言えます。
外国語映画としても新記録樹立、世界的な成功
本作の快挙はアニメ映画の枠に留まりません。米国で公開された外国語映画としても、史上最高のオープニング興行収入を記録しました。これまでの記録は、2004年に公開されたジェット・リー主演の武術映画『HERO』の1780万ドルであり、その記録を4倍近く上回る圧倒的な大差をつけての更新となりました。
全世界での興行収入も好調で、公開週末だけで1億7780万ドルに達しました。これにより、一部の新市場では前作『無限列車編』の累計興行収入をすでに超えています。なお、米国公開前の日本などでの先行公開分を含めると、全世界での累計興行収入はすでに2億8000万ドルに達していると報じられています。
社会現象となった『鬼滅の刃』の成功戦略
吾峠呼世晴氏による原作漫画『鬼滅の刃』は、アニメ制作会社ufotableによる壮大な映像美を誇るアニメ化によって、その魅力的な物語がさらに昇華され、世界的な人気を獲得しました。コミックの発行部数は累計2億2000万部を超えています。
この成功にはタイミングも重要な役割を果たしました。アニメ第1期は2019年末から海外で放送が開始され、パンデミックによるロックダウン期間中に多くのファンが作品を発見し、一気見する現象が起きました。そして2020年10月、新型コロナウイルスの規制が一時的に緩和されたタイミングで公開された初の劇場版『無限列車編』は、全世界で日本のアニメ映画史上最高の興行収入を記録しました。
過去5年間、『鬼滅の刃』シリーズはテレビアニメシーズン、特別編集版、そして物語の完結を描く劇場版三部作といった巧みなリリース戦略で、エンターテインメント業界全体にマーケティングの重要な教訓を示し続けています。
ソニーの戦略と日本アニメの世界的台頭
今回の歴史的なヒットは、日本のアニメが世界的に人気を拡大している現状を浮き彫りにしています。サンフランシスコのアニメ専門コンサルティング会社Henshinの創設者であるロブ・ペレイダ氏は、「『鬼滅の刃』はコンセプトから制作まで、最高峰のアニメです。かつて米国でアニメはカウンターカルチャーでしたが、もはやそうではなく、ファンに新鮮な風を吹き込んでいます」と分析します。
また、ペレイダ氏はソニーのビジネス戦略を高く評価しています。「今回の成功は、ソニーがアニメに対して持つビジョンを証明するものです。アニプレックスが素晴らしいコンテンツを制作し、クランチロールがアニメコミュニティと繋がり、そしてソニー・ピクチャーズがその配給力を駆使して歴史的な公開を実現させたのです」と語ります。
ソニーにとって、ゲーム、音楽、映画、テレビ番組を含むエンターテインメント事業はグループ全体の売上の約60%を占めるまでに成長しており、アニメはその中核を担う重要な分野となっています。
最終決戦の幕開けと今後の展望
『無限城編』は、物語の根幹をなす敵、鬼舞辻無惨とその配下との長く壮絶な最終決戦の始まりを描く、シリーズにとって極めて重要な位置づけの作品です。
しかし、ファンがこの戦いの結末を目にするまでには、まだ長い時間が必要となる可能性があります。制作会社ufotableは、三部作の残り2作品の公開スケジュールをまだ発表していません。同スタジオの作画クオリティの高さを考慮すると、各作品の公開には少なくとも1年以上の間隔が空くと予想されています。